インドア派の僕が、ソロキャンプに興味を持ったのは1年くらい前だっただろうか?
ソロキャンプYouTuberの動画を、何気なく見ていたのだ。
ただ、料理をしてみたり、焚き火をしてみたりするだけの動画だったように思うのだが、それが何とも穏やかな気持ちになれたのを覚えている。

特に焚き火の動画には強烈に心惹かれた。
パチパチと薪が爆ぜる音とゆらゆらと揺れる炎。
ただただ、見つめているだけでも心が静かに、穏やかになっていく。
調べたところによると、焚き火の音には癒しの効果があるようだ。
それが「1/fゆらぎ」と呼ばれるものらしい。
1/fゆらぎはどうやら、自然現象(小川のせせらぎ、そよ風など)や生体リズム(心拍、呼吸など)に含まれており、リラックス効果をもたらしてくれると書かれていた。
なるほど、これで腑に落ちた。
ボーッと焚き火の映像を眺め続けてしまうのは、そんな理由があったのか。
僕はこの1/fゆらぎに癒されていたのだ。
このように書いておきながら、どんでん返しをするのが僕のエッセイの特徴である。
だから、ここでどんでん返しをしようと思う。
僕は大のキャンプ嫌いだった。
夜の静寂の中、テントで仲間と眠ることが嫌いだった。
電気を極力使わずに生活することが嫌いだった。
テレビを見られないのが辛かった。
夜に虫に遭遇するのが嫌いだった。
キャンプで作るご飯が美味しくなくて嫌だった。
理由をあげていくと、いくらでも出てきてしまうので、主なものだけに留めてみた。
改めて、見てみると文明の利器が使えないことや、自分が嫌なことがあるから嫌いだと思っていることがわかる。
まさに子どものわがままだ。
恥ずかしくて恥ずかしくて、こんなこと書かなきゃ良かったとさえ思えてくる。
これは、僕自身がボーイスカウトに入っていたことで経験したことだ。
ボーイスカウトとは、イギリス発祥の世界的な青少年教育活動である。
野外活動を中心としたプログラムにより、知識や技能を身につけ、自主性や協調性を育むことを目的としているものだ。
おそらく、親が自主性や協調性を身につけてほしいと考えて入団させたのだろう。
しかし、親の思いとは裏腹に、僕はボーイスカウト活動が嫌だった。
なぜなら、日曜日の朝が活動日だったからだ。
僕はその頃、仮面ライダーが大好きだった。
活動時間帯は、完全に「仮面ライダーブラック」の放送時間に丸かぶりだったのだ。
日曜の朝、友達がテレビの前で仮面ライダーの活躍に胸を躍らせているであろう時間に、僕は野外活動を行っている。
きっと、明日は学校で話についていけないだろう。
そんな思いが脳内を占めていて、子どもながらに僕のテンションは大いに下がっていた。
そんな僕がどうしてソロキャンプに興味を持ってしまったのだろう。
はてさて、今となってもまったくわからない。
たぶん、一つは人間として成長したからだろう。
もう一つは、テレビを見たいという欲求が子どもの頃と比べて、だいぶ無くなったからだ。
さらに深く考えてみると、僕は小さい頃は集団でいることに大切な「協調性」に欠けていたのかも知れない。
そして、成長し、40代に入り、自分のペースで自由に動くことができるものに興味を惹かれたのだろう。
つまり、僕はソロキャンプの「孤独」という大きな価値に気づいたのだ。
そろそろ僕は、ソロキャンプをしてみたいと思っている。
そのためには必要なものを購入しなくてはならないかもしれない。
そうなれば、僕の初ソロキャンプはもう少し先になるだろう。
なにせ僕は、しがないフリーライターなのだから。
と、苦笑してしまう日々だ。
必要な道具リストを眺めては、その合計金額にそっとブラウザを閉じる。
僕の初ソロキャンプは、まだ画面の中の焚き火の向こう側にある。
しかし、いつか本物の焚き火の炎を前に、一人静かに過ごす日を夢想する時間も悪くない。