エッセイ

慣れない!どうしても慣れない!

僕は出かけるときに必ず鞄を持ち歩く。
ビジネス用のバッグだけでなく、プライベートでもショルダーバッグやトートバッグを愛用している。
男性なら手ぶらでも良いでしょ、という人もいるだろう。
もしかしたら、そのような人が多いかもしれない。
というのも、何かの記事で「バッグを持ち歩く男性はダサい」とみた記憶がある。
そのため、僕は「男性=バッグを持たない」という知識が刷り込まれたのかもしれない。

しかし、僕はどうしてもバッグを持ち歩く必要があるのだ。
なぜ僕がバッグを持ち歩くのか。
それは単純な理由だ。
本を入れて持ち歩くためだ。

確かに、スマホ一つで出かけるのはスマートで、かっこいいのかもしれない。
しかし、僕にとってこのバッグは、ただの物入れではない。
いつでも物語の世界へ逃げ込める、僕だけの避難所だ。
そう思うと、この少々の野暮ったさも、悪くないのではないだろうか。

これは、京都にいた頃から習慣になっている。
移動中の電車の中、バスの中、待ち合わせ中に、時間を潰すために読書するためだ。
だから、必要な持ちものが財布と携帯(大学生当時、スマートフォンはまだ発売されていなかった)だけだったとしても、僕の場合はプラス本が必要になるので、必ずバッグを持った。

デートのときも必ず本を持って出かけたから、もしかすると当時の彼女にはダサく見えていたかもしれない。
しかし、それは仕方がないのだ。
僕は本が大好きなのだから。

このように書くと、必ずこう言われてしまう。
「電子書籍にしたら良いんじゃない?」
確かに、一番合理的だろう。
実際に、前の彼女もそう言っていた。

そこで最近、スマホにアプリをダウンロードして何冊か電子書籍で購入してみたのだが、どうにもしっくりこない。
まず、スマホでは字が小さくて読みにくい(昨日書いたように、老眼が入っているため)し、本をめくる感覚がなくてどうにも指がさみしい。

そして、おそらく僕にとってこれが一番重要な感覚なのだと思うが、本の厚みを感じられないのだ。
ページをめくっていくにつれ、左のページが減って右のページが増えていく。
それがまるで、本の世界を旅している感覚になる。
電子書籍の「あと〇〇%」という表示では、その感覚を楽しめないだろう。

Kindleを利用すれば、おそらく字もはっきり見えるだろうし、紙をめくる感覚もあるのかもしれない。
しかし、本の厚みは感じられないだろう。
重さも、一定の重さのはずだ。
ここが電子書籍の難点かもしれない。

有名な経営者が、本はかさばるから電子書籍のほうが良い、何冊も一度に持ち運べると言っていた。
何冊も持ち運べる電子書籍は、確かに便利だ。
しかし、僕はあえて「今日、この一冊と共に過ごす」と決める、その不便さが好きだ。
たくさんの選択肢から一つを選ぶという贅沢を感じられる。
その一冊の重みを腕に感じながら街を歩く、その時間が豊かなのだ

なるほど、電子書籍は合理的だし何冊も持ち運べるのは確かに大きなメリットだ。
本好きにはたまらなく魅力的に感じる。
が、何だろう、僕は電子書籍に慣れない。
前時代的だと言われるかもしれないが、やはり紙の匂いや紙の質感、重さ、厚さを感じたいのだ。

本をめくっていくとたわんでくる、あの感覚が大好きで、愛おしくてたまらないのだ。
たぶん僕は、電子書籍も利用するかもしれないが慣れることはないだろう。
本を触り、それを愛でる楽しさが忘れられないから。

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