エッセイ

不思議な不思議な沖縄の位牌

今、本土(沖縄で県外を指す言葉。内地とも)ではお盆の期間真っ只中。
多くの人が故郷へ帰り、両親や祖父母と会い、仏壇に手を合わせてご先祖さまに日々の感謝を伝えていることだろう。

ただいま絶賛実家住みの僕にとって、お盆の帰省はない。
実のところ、京都に住んでいた頃もお盆の時期に実家に帰ったことは数えるほどだ。
沖縄の仏壇は独特で、ご先祖さまの名前が代々刻まれている位牌が安置されている。
この位牌は、「トートーメー(尊い方、尊御前が由来といわれている)」と呼ばれ、ご先祖さまが宿っているとされる非常に大切なものだ。

我が家にも「トートーメー」が安置されている。
お盆の時期になれば、親族が集まり、ワイワイと過ごしたことを思い出す。

ちなみに、沖縄のお盆は本土とは異なる時期に行われることが多い。
その理由は単純明快で、お盆を旧暦で行うから。
沖縄では「旧盆」と呼ばれている。
およそではあるが、ひと月程度遅れて行われている記憶がある。

そして今、この旧盆について『2033年問題』なるものまで持ち上がっているのだから、沖縄の旧盆はどこまでも複雑で面白い。

話が逸れてしまったので、トートーメーに話題を戻そう。
このトートーメーにはさまざまなルールがある。
主なルールは4つ。

一つ、トートーメーは長男(嫡子)が引き継ぐこと。
一つ、長男と次男の位牌は一つの仏壇に並べないこと。
一つ、父系の血族以外の血を混じらせないこと。
一つ、女性に引き継がせないこと。

現在では、さまざまな解釈があるとされているが、このようなルールがあることは事実だ。
特に、長男が引き継ぐというルールにより、沖縄では長男が苦しむ結果となっている。
それはなぜか?

旧盆には、たくさんの親族が集まる。
そのおもてなしのためにご馳走を作らなくてはならない。
親族が多いところは、その準備が大変なのだ。

旧盆は、「ウンケー(御迎え)」、「ナカビー(中日)」、「ウークイ(御送り)」と3日間行われ、それぞれに違う品目の料理を用意する必要がある。
品数も多く、時間もかかるため非常に大変なのは想像に難くないだろう。
最近では、スーパーや仕出し料理店で購入したり、普段食べているものをお供えする家庭も増えているらしいが、旧盆料理を手作りする家庭は依然として多いそうだ。

このように、沖縄で長男と結婚することは、年に何回か(旧盆の他にもご馳走を用意する行事があるため)大変な作業が待っている。
そのためか、長男と結婚したくないと考えている女性が多いという。

はてさて、僕はここで大変困っている。
僕は長男だ。
その上、バツ持ちときている。
この条件を、女性目線で見たとき、僕に魅力を感じるだろうか?
いや、感じない。
そんな絶望的な条件を抱えた僕にできることは一体何か。
せめて、この沖縄の複雑で、少し厄介で、それでも愛すべき文化を、こうして文章にしていくことくらいだろう。
がんばれ、僕。
さあ、キーボードを叩きまくれ。

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