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かき氷は甘酸っぱい思い出の中に

「シャリシャリシャリシャリシャリ」
夏のお祭りや縁日の屋台と聞いて、皆さんは何を思い出すだろうか。
僕は、すぐに「かき氷」を思い出す。
そして、僕はそのかき氷が苦手だ。
どうしてもシロップの色と、強い甘さ、氷の食感が僕の口に合わなかったのだ。

幼い頃は、冷蔵庫で作った氷やお店で出てくるジュースの氷などを、平気でボリボリとかじっているような子どもだった。
年を経た今も、氷を直接かじることには抵抗がない。

しかし、どうしてもかき氷の食感だけは慣れない。
シャリシャリとした食感が苦手なのかと問われると、実はそうでもない。
梨や琥珀糖などの食感は苦手ではないので、かき氷の食感だけが苦手なようだ。

だから、僕は夏祭りデートには向かない男なのだろう。
まあ、夏祭りデートなんて、人生で数回しか経験したことはないのだけど…。

そんな僕だが、密かにかき氷好きの一面もある。
こう書くと、多くの人が「矛盾したことを書く奴だ!」と感じ、このエッセイを読むのをやめてしまうだろう。
しかし、あと少しだけ我慢して、かき氷が苦手なかき氷好きの話を聞いてほしい。

僕が衝撃的なかき氷と出会ったのは、30代半ばの頃。
10歳年下の彼女が、どうしても行きたいと言っていた、京都でも有名な甘味処に行ったときだ。

お店に着くと、彼女はどうしてもかき氷を一緒に食べたいらしく、自分が食べたいものと僕に食べてほしい(僕が好きそうなもの)をササッと注文してしまった。

ここまできて、かき氷は食べたくないと駄々をこねるのも、年上男性としていかがなものか?と変なプライドから、何も言わなかった。

「楽しみだね」

笑顔を浮かべながらこちらを見つめる彼女を見ると、余計に断ることなんてできない。
ついに、注文したかき氷が目の前に運ばれてきた。
僕は、そのかき氷の予想外の大きさに一瞬、視線を落とす。
どう見ても、かなりでかい器に盛られているのが見えたからだ。

あんな量、食べられるはずがない。
でも、食べなかったら、せっかく彼女が楽しみにしていた時間を壊してしまうかもしれない。
葛藤の中、僕は思い切って視線を上げる。
そこで見たのは、僕の想像していたかき氷ではなかった。

目の前には、器からはみ出ているフワフワのかき氷が鎮座していたのだ。
氷の上には鮮やかなオレンジ色をしたマンゴーが乗っており、甘い香りが鼻をくすぐり、自然と笑顔になってしまう。
想像の斜め上を行くかき氷の姿に、僕は無意識のままスプーンを手に取る。
そして、その氷をすくい上げて口に運ぶ。

フワッと溶けて消えてしまう氷。
ベッタリとしていない、フルーツ独自の爽やかな甘み。

「これ、美味しいね」

僕は思わず、微笑みを浮かべながら彼女の方を見る。
彼女は、スプーンを口に加えたままニッコリと微笑み、コクリと頷いていた。

今、目の前のテーブルには昔使っていたであろう、かき氷機が乗っている。
家の掃除中に、物置から出てきたものだ。
このかき氷機でできるのは、きっと僕の苦手なかき氷だろう。
でもなぜか、僕はそのかき氷機が愛しくなった。
10数年前の、甘酸っぱい記憶をよみがえらせてくれたからだ。
どことなく、当時の彼女に似て、愛嬌のある動物の形をしている。
暑い夏の午後、僕は苦手なかき氷を作ってみようかなと思った。
あのときのような、甘酸っぱい感覚を求めて。

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